おいテレ桃・・・じゃなくてテレ東


私がこの件を最初に知ったのは、とあるマイミクさんの日記であった。
タイトルによろセンと付いていたのであるが、昨夜のはどう考えてもNG、
偉人として面白おかしく取り上げるネタではない、と言う内容だった。
その口調に並々ならぬものを感じたので、
この時点ですぐにチェックしたかったのだが、
なにしろまだ熱はあるし喉は痛いしと言う状態だったので、
後で見ようと思ってその場はひとまずスルーした。
しかしそれから数十分後、また別のマイミクさんの日記によろセンのタイトルが上がり、
その文中で問題の人物がヒトラーであると言うことを知った。
正直なところ、元々TVを見ない習慣もあり、
あの番組はこれまでベリの週しか見ていなかったし、
ベリの週ですら最近は飛ばしていたぐらいであったが、
あの番組のテイストでヒトラーを取り上げればどう言うことになるかは想像に難くなかった。


とりあえず、これは体調が戻ったら一筆認めねばとベッドの中でぼんやり考えていたのだが、
今日実際に見てみたら、それは私の想像を遥かに上回ったものだった。



初見の感想を一言で言えば、ぞっとした。
ヲタ友さんの文章から私が予想していたのは、
ヒトラーを完全にネタとして扱い、笑いの要素を入れているが、
それは普通ならば笑えることではない、見ている方はドン引き───と言うような感じであった。
芸人のネタで例えるなら、


A  ちょっとインターネットのヤホーで検索してみましたら
B  ヤフーね
A  世界の偉人と言われる人をひとり見つけてしまいまして
B  ほう
A  ヒトラーって知ってます?
B  ちょww知らなかったの?
A  何だこいつと思いまして
B  まあ知らなかったらそうなるよね
A  ちょっと今日ヒトラーのこと調べて来たんでお話させて頂こうと
B  ヒトラーのこと勉強して来たんですって


・・・と言うようなことである。
しかし、実際には何か・・・・・この上なく親しみを込めた、
恐ろしいほど温かい目線で彼を扱っていたのだ。
これは本当に寒気がした。
まるでナチ党の大人が子どもたちにヒトラーのことを話しているかのような・・・
我が総統は素晴らしい人間だと教えているかのような・・・



国民の心を掴んでいた───
当時のドイツ国民がヒトラーの虜になっていたことについては確かに事実だが、
それは演説の力だけではなく、ヒトラー(と言うよりゲッペルス)の狡猾なプロパガンダ戦略、
ヒトラー流の『政治の美学化』(=弱者のルサンチマンを集団オルガスムス(恍惚催眠)的に利用する戦略)
などによるものだ(ちなみにこれらは時を越え、21世紀の日本でも威力を発揮した〜ただし我が国の場合は『政治のお笑い化』と言うべきだが)。
仮にそれを省いたとしても、
その「癒しの演説」がユダヤ人を消し去れと言う内容だったことに触れないのはどう考えてもおかしい。
さらに、私が気になったのはその次の件だ。


ヒトラーおじさんはあるコンプレックスを抱えていたと言われているんです。
実は、身長が低いことなんですよ。
でもこの話はですね、ヒトラーおじさんを良く思っていなかった人が、
小物に見せるために流した嘘とも言われています。


℃-uteのメンバーは、演技でなく本当にアドルフ・ヒトラーを知らない様子だった。
ここで、メンバーの目線で考えてみると、
全く知らない人物を上記のように説明された場合、どう思うだろうか。
彼を良く思っていなかった人が流した嘘・・・と言うことは、
彼が嫌いで嘘までつくような人以外には良く思われていた、と言うことになる!
まさか、そんな人物が自分と歳の違わぬ子どもたちを含む大勢の人々を虐殺したなどとは、
彼女たちは考えもしないだろう。
ある種、メンバーへのマインドコントロールでもある。
今のところ、彼女たちのヒトラーに対する認識は、
「話上手な癒しのおじさん」と言うことになる。
こんな馬鹿な話があってたまるか!



言うまでもなく、台本を用意しているのは番組の制作スタッフである。
しかし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あり得ない。
何故こんなテーマにすることを選んだのか?
生放送ではないので、編集やチェックした時に誰もおかしいと思わなかったのか?
その結論も過程も、スタッフが皆ネオナチでないのならば、全く以て理解出来ない。


百歩譲って、ヒトラーを題材にすることを前提として、
このような台本になった理由をいくつか考えてみたのだが、
真っ当な論理は浮かばなかった。
強いて言うなら、
「笑いを生むために(笑い易くするために)その人物への批判は避ける」と言う理由だが、
前回のピョートル大帝の時は
「変な税金を大量に作って市民からお金を取っては武器を作っていたひどい人物」
と言う視点になっていたので、これは当てはまらない。
何故ピョートル大帝は「ひどい人物」で、ヒトラーは「癒しのおじさん」なのか?



ヒトラーの所業については今さらいちいち挙げるまでもないが、
仮にスタッフが彼の罪についてよく知らなかったとしても、
歴史に関しては全く客観的な立場など存在せず歴史上の人物をどう捉えるかは無限の視点が存在するとしても、
コロンブスガリレオと並ぶ「世界の偉人」として、
それもバラエティの題材として取り上げるべきものでないことだけは明らかだ。


と言うかホンマにそもそも、何故数多の偉人の中からわざわざ彼を選んだのか?
この分野は、明らかに1週間でネタが尽きるようなものではない。
問題の回以前の「偉人」のチョイスも首を傾げたくなるものがあり、
はっきり言って非常に微妙な人選が続いていた。
バラエティ用ならば、科学者などの方がネタ要素も多いだろう。
例えばニュートンの卵と間違えて時計を茹でたと言うエピソードなどは、
アドルフ・ヒトラーの口許や頭髪よりも、遥かに和やかな笑いになるはずだ。
ちなみにそのヒトラーと並んで疑問なのが、
大体マリー・アントワネットは「偉人」なのか?と言うことである。
どうも偉人と単なる有名人を混同しているように思えるのだが・・・・・・。
まあそれを言ったらそもそも「偉人」の基準とは何か、と言う話になるのだが、
もし本当にスタッフが偉人の意味すら理解出来ないような頭脳しか持ち合わせていないのならば、
こんな議論をしても全く無駄だと言うことになる。



そんなわけで考えれば考えるほど、
あり得ないことが起こったな、と言う結論に達するわけである。
考えれば考えるほど、何故このようなことが起こったか分からなくなるし、
考えるのが馬鹿らしくなって来る。


深夜、この件がmixiニュースのトップにも出てしまっていた。
言うまでもなく、台本を用意したのはスタッフなのだが、
あの見出し(アイドルのヒトラー発言・・・)では世論に与える印象はどうしようもなく、
批判の矛先は彼女たちに向かうだろう。
こんな馬鹿らしいことで℃-uteのイメージが低下するかと思うと、激しい怒りを覚える。
なっきぃは与えられた台本を忠実にこなしただけである。
バラエティ番組の「先生」として、彼女が見事な役回りを演じていることは、
問題の回以外の放送を見れば分かることだ。
もしこれで何か実害が出れば、と言うかあの見出しが載った時点でもう出ていると思うが、
よろセン!製作スタッフはナチス以上に醜悪な存在であると思う。
私はそれが許せない。
こんなことで、℃-uteの輝きがくすんではならない。